こんにちは、とすけです。
今回は「書き出し祭り」というイベントの感想をひたすら書いていこうかなと思ってます。
全部で100作品ですよ。100作品。やばいボリュームなので、感想はいくつかに分けて記事にしていきます。
注意書き(必ず読んでください)
この感想はとすけ自身の創作探求のために書いています。どういう作品が自分の心の琴線に触れるか、とか、そういう感性を育てたいがための記事です。なお作者様に楽しんでもらって「うふふ」と喜んでもらうのも目的です!
胸糞わるい礼を逸したマネは決してしたくないし、好き嫌いがあれば「嫌い」を排して書きます。頼まれてもないのに、アドバイスなんてしませんし、設定等にも基本的にくどくどケチはつけないです。ただ、後述の投票のための採点との兼ね合いもあるので、たまに「not for me」くらいは言います。なるべく”正直な好き”を残します。そういう場所にします。
私も長いこと創作者の端くれですので、求めてない感想や考察を好き勝手に言われる人の気持ちの快不快があることは十分理解している。そのうえでここに全て残そうと決めてます。
なので、この注意書きの意図としては、上記要素を「求めていない」「嫌いだ」という人たちに引き返していただくために書いてます。私もそういった事故は求めてない、もはや事故れば誰も得しないので、できれば引き返していただければと思います。
万が一作者様自身が不快な印象を持たれ、削除を希望される場合は遠慮なくDM等でおっしゃっていただけますと幸いです。当方が作者様からのメッセージに気づいた時点で即刻該当部分について削除いたします。
書き出し祭りとは
「書き出し祭り」は小説投稿サイトの「小説家になろう」で開催される、匿名での競作イベントです。
プロアマ問わず、総勢100名の参加者が未公開新作の冒頭(3,200字以上4,000字未満)を提出し、投票形式で競い合うバチバチのころしあい対戦会です。
作者名を伏せて公開されるので、基本的に作品は前評判に左右されづらい。純粋に、総合的に面白い!と皆に思われた作品が評価されやすいのが魅力的な企画です。
具体的なルールについては、下記企画ページにて読者向けに公開されているものがあります。多分ここに来るのは実際に作品を書かれた方が多いでしょうけど、念のため、初見さんにためにおいておきます。
投票基準
おこがましいのは承知で、作品数が多く順位付けに迷う可能性があるのと、自分の感じたことををある程度定量的に言語化したいのとで、各作品に評価点を付けてます。基本的にネガティブな発言はしませんし加点しかしませんが、たまに評価点を左右してしまった「not for me」くらいは言います。
私としては、私自身の成長のために、作者様の方々の胸を借りる気持ちでいます。
そのため繰り返しですが万が一作者様自身が不快な印象を持たれ、削除を希望される場合はDM等で遠慮なくおっしゃっていただけますと幸いです。当方が作者様からのメッセージに気づいた時点で即刻該当部分について削除いたします。
評価基準は以下の通りです。
- 導線の強度(インテンシティ)
- アイデア
- キャラパワー
- 好み
これらを五段階で評価ます。評価理由も簡潔に添えたいと考えてます。
以下、各項目ごとの評価基準について書き記しておきます。
■導線の強度(インテンシティ)
サッカー用語を借りて自分は『インテンシティ』と呼んでます。日本語で適切に一語で表せない、ニュアンスの言語ですが、あえて創作向けに日本語化するなら「導線の強度」なのかなと思い。
読者を物語へ上手く没入させるための世界観やキャラおよびその他設定が、組織的に絡み合い、一本のストーリー軸として総合的な「強度」を持っているかを評価の基準としてます。
ただ、「強度」が低くても特定層に向けた強い方向性を提示できている作品もあるので、そういうのは自分の知識の無さから見落としちゃうかもしれない。あと、自分含めて読者によって趣味嗜好あるので、そういった部分にも左右されるかも。
もともと自分の課題を明確化するために最近考え始めた評価値ですが、上記理由からこの値が高いと好みも少し高くなるかも。
あくまで私にとって導線の強度が保たれているか。そういう身勝手な基準です。
■アイデア
言葉の通りです。テンプレ外し、単純な着眼点の妙等、アッと言わせるようなアイデアが光る書き出し内容を評価の基準としてます。割と書き出し祭りの趣旨ってここにあるのかなとも思うので、これも重要だと思い。
これが強いと話題性が高まったりするんじゃないかな、なんて思ってます。評価値としては一番ぼんやりしてる。
■キャラパワー
主役たちの物語を動かす推進力を評価の基準としてます。
血肉が通った人間性を感じるか。ストーリーへと能動的に、目的をもってかかわることができるか、というのを見てます。そのため、キャラデザインの奇抜さというのは見てません。それはアイデアの項目に入ります。デザインが良いのとキャラとしての力量は別軸と考えてます。
パワーが高いと、主役級のキャラの心が物語を推進させて、物語の進行が自然になると考えてます。
ただ、昨今の娯楽作品にもキャラパワー低い主人公はそこそこいる気がするし、それでもウケてる作品に心当たりはあるので、あまり書き出しの評価値としては信用してないですが、自分の中で譲れない基準という位置です。
■好み
好きなものに捧げるポイント!!
それ以上でも以下でもないです。もし低かったら、嫌ってるとは思わないでくださいね。私の好みに合わないだけなので。
例えば、私は水溶性食物繊維を消化しづらい体質でして(マジ)。そんな私にほうれん草の胡麻和えをボウルいっぱいに出されてもほんの少ししか食えないよ。自分に合わない食事だよ。というだけの話。私は肉とか卵が食べたいんです。でも世の中にはほうれん草の胡麻和えをボウルいっぱい美味しく食える人間もきっといるはずなんですよね……。
なお、どの作品にも好きな要素は必ずある。ほうれん草の胡麻和えも、私にとっては、味自体は大好物に匹敵するのだから(悲劇)。
企画関連リンク
第一会場 感想
1-01 五国を統べる夜の王
■タイトル感想
タイトルの音の感じがいいなと正直に感じました。
なんでタイトルに惹かれるのかな、と思ったら「俳句」だったんですよね。【五国を統べる】【夜の女王】は7音5音の組み合わせになっていて、実にリズミカルで舌触りが良い。下記名作タイトルと混じってても違和感ないんじゃないか!?試そう(なお、7音7音も短歌的で好き)
- アルジャーノンに花束を
- 月は無慈悲な夜の女王
- ライ麦畑で捕まえて
- 五国を統べる夜の王
- 夜は短し歩けよ乙女
ほら~!ほら~ホラリラロ!違和感なし、こういうことですよハッハッハ!!日本語の正解がここにある!(?)
なにより、『五国を統べる夜の王』って言葉がカッコいいんですよね。一瞬変なテンションになったんですけど、本当に、冗談抜きでかなり好きなタイトルなんです。
■あらすじ感想
スケールが大きい!
読み取れた情報と、情報以上に推察できる要素は以下の通り。
- タルグ国の外れ……気になる魔女の隠れ場所。
- 魔女……ザナの母親にして魔法の師。消息を絶つ。とある謎を残す?
- ザナ……主人公。魔法使い。夢魔との契約在り。五国をかき回すダークヒーローとなる?
- 夢魔……まだザナと契約していること以外はわからない。ザナの願望を聞く。相棒/ヒロイン枠?
- 大陸の五国の変化……歴史で言う戦国時代への突入の予兆あり
かなりてんこ盛りだが、最後の二文で、ザナの出自、契約、戦乱に巻き込まれ、覇権争いまで至る経緯とは……という点を導線にして本文に意識の矢印が向かう。この意識の矢印を書き出しで、どうやって軌道に乗せるのか、期待しながら本文を読み始めました。
■本文感想
これからザナと夢魔のめちゃくちゃな旅が、侵略劇が始まる!
という感じで、思ったよりも内容はキャラクター性を前面に押し出していてライトな掛け合いを主軸にしていましたね。たいあらでの想像よりもライトノベル寄りで、軽快に、スルスル読めました。これは可読性の獣。
ふと、高校の通学時にゼロの使い魔を1時間1冊ずつ読んでいたことを想い出しちゃいました。ライトノベルの中でも特に読みやすい内容の本の可読性ときたら凄まじいですよね。
私はファンタジーにやや疎いので、夢魔が何かを調べたのですが『夢に現れる悪魔』、要にサキュバスやインキュバスの類いであるとのことで……。ふーん、えっちじゃん。(歓喜)
主人公の出自を含め、母が隠しているもの、というのが謎になっており、一万年前に契約していた夢魔が鍵になっていることを予感させる。突如現れた魑魅魍魎、というやつも気になるところです。
なお、主人公の受動性の高い動きにより、まだ、このスケールの侵略的物語を牽引するだけのキャラパワーがあるのかが未知数。書き出し時点ではまだ予測つかない部分なので、これからに期待です。状況変化にさっさと適応できるような、かなりのしたたかさを持ち合わせてるように見受けられる……!
もう少し先まで読みたい作品でした!
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★☆☆☆(謎多き主人公が導線として強い!)
- アイデア:★★☆☆☆(夢魔との契約年数で奥行が生まれてる。勉強になります)
- キャラパワー:★★☆☆☆(主人公の今後の振舞に期待!)
- 好み:★★★☆☆(スケールの大きさから感じる野心が好きだ!)
計:9点
1-02 首なし奏者と女神の音階
■タイトル感想
内容と照らし合わせて、軸が定まっているタイトルは気持ちがよくて好きです。皆タイトル付けるのうますぎません?
素直なタイトルなだけに作中のアイデアが良くてしっかりと個性になってて、勉強になります。
■あらすじ感想
この時点で既に導線が強い。主人公サイドの唯一無二の目的が提示されており、安心感がありました。その冒険の果ての不穏な匂わせも効いてくる…………!!
音階言語のアイデアが光っていて、書き出しで強い印象のこれをどう活かすのかな、と、わくわくさせられます。
ファンタジーにやはり疎いので、西洋的な神話のティストの世界で「巫女」という日本語が出てくるのに新鮮な感覚がありました。調べてみると、ギリシャ神話圏のシビュラ等も巫女と呼ばれており、広義には女性のシャーマンは巫女と呼べるようで…………なるほど、また一つ賢くなったぞ!ていうか割とファンタジーじゃ常識じゃねえか!!(無知)
一本筋の通ったタイあらに、本文への期待が高まりました。
■本文感想
側仕えがいるということは、神に仕える巫女はそれなりに高い地位にあるのでしょう。それがたった一度の失敗で、楽譜と首を取り上げられ現世に放逐される仕打ちを受けているという。なにやらかしたんだ。笑
この世界の楽譜も何やら只ならない感じですね。主人公は、音律の女神に許されるには楽譜が必要だというが、その楽譜は取り上げられた楽譜とはまた別なのでしょう。おそらく。
音階言語は極めて特殊なものと思われます。この設定、深い!!ボボボァッぼっぼぼぼぼぼぼァ!!!
素質として絶対音感を備えている必要がある。ということは、相対的に音域を探って、ロジカルに文脈を紐解いて解析することも何故かできないという意味にも捉えられます。理解するためには絶対音感であるうえで言語体系の学習が必要と言われています。絶対音感であろうが相対音感であろうが、音階でいう『ド』は『ド』でしかないはずなので、一見すると矛盾している言語です。しかしドルチェとルバートはなぜか先天的にその言語体系を理解しています。矛盾を補完するこの事実がファンタジー的な設定の奥行きを感じさせ、想像させてくれる。構造がかなり巧妙だなと唸らされました。音階言語とはいったい、また、この世界における絶対音感とはいったい何なのでしょうね。かなりスケールがでかい設定で、好奇心が膨らみます。強い。
アイデアも強くて、首が無いから音階言語に頼らざるを得ない主人公のデザイン性が良い。まるで神話の一部の様に感じました。ドルチェがどう世界を認知してるのか(ドルチェはフラットの「あの銀髪」発言で正確に他者を識別しているような仕草をした。聴覚はファンタジーの気質を帯びているので、世界認知にも何か設定があると想像)も気になります。
主役達は上手くこの書き出しで軽快に紹介されていましたね。楽しい。それとトレードオフではありますが、物語的な目的と役回り以外で、キャラパワーはまだまだ途上。なのに今後のみんなのキャラパワーに期待したい気持ちが、導線にもなっていて物語としての強さを感じました。強い。
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★★★☆(一本の道筋が通っていてキレイ)
- アイデア:★★★★★(首なし巫女と音階言語、強すぎるッピ!!!)
- キャラパワー:★★★☆☆(まだ全員前に出てきているわけではないので、これからに期待!)
- 好み:★★★★☆(音階言語のような拡張性豊かな設定がすき。あと安西先生、獣 人 を モ フ モ フ したいです)
計:16点
1-03 箱庭のジェミニ・ドール
■タイトル感想
作品内容をシンプルに伝える感じの、軸が定まっているタイトルで好きです。
これも、ジェミニ・ドールという唯一無二の設定のアイデアが強く、かなりの個性になってると思いました。だからなんでみんなこんなにタイトル上手いの
■あらすじ感想
人口爆発による、居住区のスペースコロニー化ならぬ箱庭化。古き良きSF(宇宙もの)の王道設定を上手く地上化し独自設定に組み替えている印象があり素敵でした。
ジェミニという名が想像させる通り、人々は小さな人形に自身の感覚をリンクさせて、自分の生き写しとしている。私の考えすぎかもしれませんが、ジェミニというネーミング自体が微妙なフックにもなっている様に感じます。双子というのは突き詰めると結局他人ですから。そう考えると少しばかり「自己存在」という観点で不穏な展開になることを期待しちゃうんですよね。ワクワク。
ストーリーの導線がこの時点でまとまっており、この時点で続きが気になる!という引きがあるのに驚嘆しました。
SFとしては残念ながらあまり自分には合わない作品の可能性はありますが、高い完成度を期待させてくれるタイあらで、とことん学ばされます。パワーが高い…………!
■本文感想
主人公の心理描写含めた造形のパワーが高く、物語をけん引してくれている。世界観や物語のためのキャラになっていないという点がかなり「うおおおおおお!!」となった部分でした。
一見無気力で受動的にも見える主人公なんですけど、バックグラウンドから浮かび上がる血肉の籠った人間性によって「玲斗の選択が物語を進めてくれる」という信頼感が生まれてるんですよね。彼は目的が無いように見えながら目的や刺激に飢えており、それが言動ににじみ出ている。その無気力感を濁すための「暇つぶし」が少女との出会いを引き込んでいるわけですから。とにかくキャラパワーが圧倒的に高い。
キャラパワーが高いと自然とそれに引っ張られて導線の強度も整っていくので、安心して読ませてくれるその実力に脱帽したい気持ちです。ジェミニ・ドールという強いアイデアもいい感じにキャラクター造形と噛み合っていて、この先、玲斗がどのような選択をしていくのか、目を離せません。
これは私が悪いのですがSF世界観への違和感で現実に引き戻される点があり悔しさを感じました。筆力が高く説明がとても上手いので、問題ないと思っているんです。作者様に一ミリも罪はございません。これは本心です。私のカスみたいな拘りがひどく邪魔をして可読性を下げてくる。許せん。浸らせろ。
なので、ちょっと悪い予感が当たっちゃいました。SFとしては自分にはやはり合わなかったのかもしれません。できれば気にしないでほしいです。説明描写の入れ方がとても上手いので、通常は深く物語に没入できるという感想を持ちました。
「上手っ!?」と舌を巻いた書き出しであり、筆力の高さに喝采したくなる。そんな作品でした。爪の垢を煎じて飲みたい。
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★★★☆(キャラクターの確かな骨格。爪の垢ください)
- アイデア:★★★★★(ジェミニ・ドールの発想と各キャラのデザインが強いッピ!!)
- キャラパワー:★★★★★(“STier”主人公。彼の血肉が物語のエンジンになっており脱帽)
- 好み:★★☆☆☆(主人公が素晴らしい!!ただSFとしてはNot for me 泣)
計:16点
1-04 絶世の天才退魔令嬢は禍ツ神に愛を囁く
■タイトル感想
タイトル分かりやすい!!
内容が透けて見える。この手の物語を欲する層がとっつきやすいタイトル。自分が技術的に苦手とするタイトルの付け方なので、勉強になります…………!
■あらすじ感想
じゃーん、えっちふん(歓喜)禁断のLOVEの予感がするんだな!今、ここに!
なんというか、そういうシチュに燃え上がる層のヘキをクソほど刺激する、攻撃力があまりに高いあらすじです。ちなみに私がその層だ。
自分のヘキは置いといて冷静に読み解きます。ジャンルは和風恋愛ファンタジー。禁忌に触れる恋の予感、秘めた願い、というのが大まかな導線となっていますね。自然と本文に誘われる、良いタイあらだなーと思いました。
■本文感想
時代設定は日本史のIFでしょうか。それとも共通項があるだけの別世界なのか。まだ判別はできず。家臣、嫡男、という言葉が残っているということは、武家的な文化が生きているとも考えられますが、退魔の名家というかなり特殊な立場にありそうな家を舞台にしてるので、風土や文明の全容は書き出しでは見えてこない。敢えてぼかしてるのかな(それか文字数の制約で削ったか)。これから詳しく出てくることに期待してます。なんとなく設定の奥行きは感じているのです。ファンタジーや日本史に然程詳しいわけではありませんが、しっかり練られてそうな雰囲気があり、注目してます。
そして
じゃーん、えっちふん(歓喜)とかタイアラで調子に乗ってる場合ではなかった。最後のキスシーンが頭に入ってこねえ。他キャラも頭に入ってこない。だって、思ったよりもハードな言動の珠媛様に圧倒される。作者様の意図的な演出と信じてここは言葉を選ばず言いますが、珠媛様、頭のネジがおイカれてしまわれておられるる(動揺)。まさかの恐怖政治系ヒロイン。アイデアとしてはぶっ飛んでて、好きです。物語を動かすキャラパワーはまだ未知数。しかしこの作品についてはそれでいいと思ってしまう。それほどに強烈ですね。その強烈さの裏に、何を珠媛様は隠しているのでしょうね……。気になります。
上記とトレードオフでしょうけど、珠媛様は難しいキャラクターですね。本人が「どう見える?」と問うように、だいぶ人間離れしてらっしゃる。もはや神話の神に近い雰囲気がある。そのアイデアが強いので導線になる部分でもある。自分は好きですけど、好き嫌いは分かれるでしょう。自分はヘキ……好きです。あの、ちょっと珠媛様に殺されたいかもしれない(???????)
文章を意図的に切ることで、次回以降のフックとする手法は知らなかったので、びっくりすると同時に学びになりました。続きが気になる仕掛けづくりが巧妙でした。
刺さる層にぶっ刺されという潔さがある気がして、好きです。
物語としての進展は意外とスローなので、今後珠媛様の状況がどう変わっていくのか、期待です。
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★★☆☆(数多の謎による引きが強い!)
- アイデア:★★★★☆(珠媛様は空木宮家にて最強。または最凶。もしくは最狂!)
- キャラパワー:★★★☆☆(未知数だが推進力の片鱗は珠媛様の”秘めた願い”と”正体”にあるか)
- 好み:★★★★☆(超攻撃的な内容ゆえに、潔さを感じて好きです。ごちです!)
計:14点
1-05 君と出会った夏~初めて、こんなに人を知りたいと思った~
■タイトル感想
甘酸っぱい!直球な恋愛を予感させるタイトルです!
この時点で私は既に「あらやだ~」とか親戚の子供の恋愛話で口元を抑えて照れるおじさんになっている。良いタイトルだ……。
■あらすじ感想
「リフレ店」ってなんだ!??(純真)
検索してみると……。なるほど、なるほどね!んふーん、えっちじゃ(穢れ)こうして“無垢”な私の検索履歴に、嫁に見つかったら殺される履歴が一つ追加されたのであった
それはさておき、その跡地から始まるラブストーリーですね。
最低限の内容と引きで、本文勝負の意図が見えるようです。私は、こういう潔いあらすじが好きだ!!
■本文感想
あ、アイエエエナンデ!!?死体!?ど、どどどどドゥワァ!!トウバンヒャクゥ!!!!
と思わず叫んでしまいたくなるような衝撃展開。掴みのアイデアが強すぎる。天才でしょうか???
主人公のキャラパワーもかなり強い。暇を持て余し、暗い欲動に支配されつつある。人の理性のタガが外れていく過程の描写があまりにも鋭い。実体験でしょうか???
人間の理性の解し方って、例えるならバク宙の習得過程とよく似ている気がするんですよね。バク宙の恐怖感の克服については、補助を介した技術的な経験で慣れつつ解消してくものです。「これやってもいいんだ」という風に脳のルールが書き換われば、あとは人間それをやれちゃいます。紗希と出会うまでに、既に慎吾は、性欲の探求を繰り返すことによって理性がいい感じに解されて仕上がってたのでしょう。その娯楽への探究心が倫理感を既に凌駕しつつある状態だったと推察します。
冷たい死体は慎吾の娯楽に適さないので、代わりに紗希の素性に趣が向いたのはあまりにも生々しくて良い。そこをきっかけにして今後展開されるドラマに期待したいですね。彼自身の精神的に深い部分の掘り下げにも期待したい。
あと、これは最早避けて通れないこの作品の宿命みたいなもんでしょうけど、G描写もあるしで、確実に読者を選ぶ。共感を軸にキャラ理解をする層には多分きつい。”タイあら/本文”のギャップを創るアイデアも、割と誠実性という意味で勇気がいる。でもこれでいい。かまわん、征け。個人的にはこれらを弱点と呼びたくない。こんなにも丁寧で繊細な人間の造形美を……!
作品としての完成度は素晴らしいの一言に尽きます。好きです!(告白)
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★★☆☆(“タイあら/本文”のアイデアとトレードオフで爆発して読者を選ぶが、好きな造り)
- アイデア:★★★★★(作者様は破壊神ですか??)
- キャラパワー:★★★★☆(等身大の解像度。息遣いが聞こえるような丁寧な造り込み。ただ目を背ける人も必ずいる)
- 好み:★★★☆☆(純文テイストで人間を掘り下げてくれる作品が好物!)
計:15点
1-06 ぼっちエルフは転生者に狙われてる
■タイトル感想
なんかわかんないけど逃げて!!
と叫びたくなるタイトルでした。好き。
■あらすじ感想
シンプルではありますが、この時点で誰がどの目的に進もうとしてるのかハッキリしていて導線の強度を感じる。安心感のあるタイアラでした。なんか強さを感じる。
ここからどう物語の風呂敷を広げていくのか期待!
■本文感想
タイアラはまさかのエルフリア視点でした!本文と視点がずれているのがかえって面白いし、刺さる人には刺さるのだろうと感じました。その意気や潔し!とこぶしを握り締めています。
序盤から乙女ゲーム転生設定をお義兄様に使っているのだが、主役はその義妹である悪役令嬢アリーナ。彼女の視点で物語が進むことで「お、これは……ただの転生ものではない?」というフックになってる。開始十行で行われる、早すぎるテンプレ外しの技術……俺でなきゃ見逃しちゃうね。見事、と思いました。この辺、自分がファンタジーに疎いのもあるかもなんですけど、好きですこれ!
御者さんとのギャグパートを経て、スーパーパワーを得たいアリーナは森へ……と思いきや、トラブル発生。エルフリアと共に転移魔法で転移してしまいます。何やらこの二人、可愛い予感がしますね……。
エルフリアはどこで生まれどう生きてきたのか。続きが気になる要素です!
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★☆☆☆(エルフリアの謎が導線に)
- アイデア:★★★☆☆(まさかの義兄が転生者。どう活かすのか!これからに期待)
- キャラパワー:★★☆☆☆(いまは未知数。エルフリアに期待してます!)
- 好み:★★☆☆☆(可愛いお話の予感がするのだ……)
計:9点
1-07 魔狼ヴァナルガンド殺人事件
■タイトル感想
タイトルがぶっちぎりでカッコいい……!第一会場の中では一番すきかもしれないです。
「~殺人事件」というのはサスペンス王道のタイトルって感じで良きだし、だが、魔狼というワードが一気にファンタジーを予感させてくれる。
タイトルだけで内容を期待させてくるなんて、流石に秀逸すぎる。そのタイトルセンスくださいよ。
■あらすじ感想
好き。ミステリー/サスペンス/ファンタジーですね。
ミステリーらしい謎の提示がお見事。書籍の背表紙に書いてある奴ですよこれもう!
まんまと期待感爆上がりでございます。ドレスコードに身を纏い、作者様の掌で踊る準備はできていますぞ!
■本文感想
ポルノグラフィティの『ラック』が脳裏に流れてくるような、等身大のすれた若者臭さを爆発させた書き始め500文字程度で、魅せられてしまいました。もうすでにキャラパワーが高い。世論に反し、彼が夜の街を歩く理屈が人間として通っている。
真面目な若者ほど、こうして極端に陥る病理があると思ってます。高2病とかであまりカテゴライズしたくない。現在だけでなく過去未来にも視野が広がっていくことによって表出する様な、割と人格形成的に深い部分の病理。だからこそキャラクターとして上手く反映できると面白くもなるんだなと思わされる。勉強になります。
そして、この物語はそんな私の期待感と推測を裏切らない。もうこのパッションを言葉をまとめるのも面倒なので、以下、好き勝手放出させてください。(ひどい)
最後の文で明らかに確定するんですが、月島夕理は『先天的な人狼というけったいな設定を持つ、普通でありたい男子高校生』です。その複雑な出自と繊細な精神面の願いにより、彼の一人称で表出していた厭世的な若い病理に、突如として力強い骨組みがグッと組み込まれて、ガチっとプロファイルのパズルがはまる。正直、鳥肌が立つレベルの構成力と解像度でした。
他にも描写に違和感を混ぜるのが上手すぎる。主人公が人間でなく「まともでありたい」人狼であるという目線が至る場所にちりばめられている。人間という先入観で読むと明らかにつじつまが合わなくなる部分。その違和感は後半部分になるとあからさまになっていって、読者目線で予想がつくようになっていく。巧妙だ~。
まるで廃墟だ。生きながら死んでいる。人間だけが忽然と消えたみたい。こういうのをバミューダトライアングル、というのだったか。
「なら、私が残るのは道理だよね」
呟いた。
本文前半部分より
「……補導で済めばいいなあ」
もしそうなった場合、問答無用で発砲されても文句は言えないかもしれない。確か、日本の警察官が拳銃を所持するには相応の手続きが必要だったはずだけれど――そのくらい異常な状況である。仕方ない。
うーん、万が一、自衛隊まで出張ってきたらどうしようかしら。
本文中盤部分より
展開としてはとても分かりやすく、飲み込みやすい。事件の導入がスッと頭に入ってきました。
クラスメイトの氷川さんを警察に突き出すのでなくまず”先生”と共に『問い詰める』というのがまた、彼らの種族的コミュニティの存在を感じさせ、世界観の広がりを予感させる。引きになってる。
第一会場の投票候補筆頭です。
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★★★★(キャラクターも世界も強く物語を引っ張るその構成力に脱帽)
- アイデア:★★★★☆(突飛なアイデアというわけでない筈なのに、構成/構造、魅せ方の妙技でアッと言わされた)
- キャラパワー:★★★★★(彼の人間性、その成立ちまでもが浮き上がる。彼の願望をどう物語と衝突させていくのかに期待してます)
- 好み:★★★★★(な゛ん゛でづづぎな゛い゛ん゛だよ゛お゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛ん゛!!!)
計:19点
1-08 妹がおにぃの恋愛事情に口を出すのは当たり前のことなんだから!
■タイトル感想
いいい妹ものだぁ!!!
ザ・ラノベ的な名づけ。想定読者がハッキリしていて、これもまた上手いタイトルと思いました。
■あらすじ感想
ラブコメかと思いきや、いや、ラブコメかもだけど!
ブラコン妹VS三大美少女ってことか!ラノベ詳しくないので分からないんですけど、こういう視点でのお話ってのはあまり見たことが無く、冒頭からのかっとびっぷりに期待です!
■本文感想
1人称3人称混合の視点のやつだ!!(正しい名前を知らない奴)
昔読んだラノベだと、SAOとかがそうだったなー、ってぼんやり想い出してました。
予想と違い、穏やかな日常からスタート。主に修哉という人物のキャラクター像、置かれる状況に焦点を当てて場面が流れ去っていきますね。この何でもない、無駄でも有意でもないように感じる日常感のバランス、ってのが良きと思いました。会話ベースですが、修哉の状況をゆっくり拾っていける。こういう尺を使った丁寧な組み立てはが好きです。
果たして三大美少女と修哉のなれそめ、そして妹も含めて修哉にこだわる理由は?これからどうなっていくのか。美鈴は三人の強敵から愛する兄を防衛できるのか?なぜ美鈴は兄の恋愛への口出しして当然という認知になったのか?そういった引きに後半は全ベットした構成でしたね。まんまと先が気になってます。作者様の掌で踊らされておりますよ!
なお、修哉が長袖に拘る理由も、ちょっと深読みで「なんかあるな」と思っています。俺のパッションレーダーも侮ってもらっては困るのだよ。
それはそうとして修哉の美女たらしめ!!!!!!!!ヒューヒュー!!!
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★★☆☆(修也と三大美女の関係性等、ちりばめられた伏線の数々!)
- アイデア:★★★★★(兄防衛戦という歪んだ三角関係?五角関係?なかなか見ないやつ!)
- キャラパワー:★★☆☆☆(完全に未知数、ただし伏線はある!)
- 好み:★☆☆☆☆(不運でしかないのですが……嫌いではないんですけど、ジャンルそのものに好きな要素があまりないというタイプのNot for meでありまして。しかしながら、ブラコン妹VS三大美少女というアイデアには唸らされました……!!)
計:11点
1-09 呪い呪われ回る矢印
■タイトル感想
意味深!ですが、おそらく内容を上手く総括したタイプのタイトル。
少なくとも穏やかではなさそうですね!
■あらすじ感想
呪われしギャル。なにそれ強い。あと、シンプルでまとまりが良いあらすじ。強い。
あらすじから察するに、呪いは数人の宿主を経て現在に至る?それとも別?
推理ホラーとしての物語を期待して本文に行きます!
■本文感想
ギャルの笑歌と主人公の純粋な仲の良さが伝わってきますね。奥行きのありそうなキャラクターが自然と引き立って、引き込まれました。
そこからラスト一文。急転直下の事実の告白が良すぎでした。この物語が推理ホラーとしても一筋縄ではいかない、複雑な人間の業が絡み合っていることを思い知らされました。先の純粋な友情のほほえましさを見ると、ああ、この作品に出てくる人物は殆どが誰かに恨まれる理由を抱えて出てくるんじゃないか、なんて予感してしまう。
ぬいの正体もそうですが、主人公が人を呪うに至るまでの過程/うしろめたさ。それらが物語の強い導線になっていくことを強く期待できる、素晴らしい物語構成でもありました。
あと人物描写がめっちゃ上手いんですよね。仕草や姿で香る人間性の出し方というか、かなり等身大な感じの滲ませ方が、本当にしゃれていて、センスと拘りを感じずにはいられない。キャラパワーの源です。主人公と笑歌の距離感や人間味を文章量以上に読ませてくる。なのに不思議とくどくない。何だこの技術??(羨望)
ぜひとも、最後まで書き上げてほしい一作です。
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★★★☆(呪いの謎と複雑な人間模様が気になりすぎる!)
- アイデア:★★★★★(ラスト一文が美しすぎる。デザイン力)
- キャラパワー:★★★★★(主人公の複雑かつ等身大な人間性に、深い可能性を感じる)
- 好み:★★★☆☆(この手の話は趣味ではないのに読みたくなる吸引力がすんごいDysonだよ)
計:17点
1-10 瑠璃色の銃声◆元子爵令嬢の浪漫奇譚
■タイトル感想
タイトルがものすごくカッコいい。タイトルセンス分けてください。
元子爵令嬢の浪漫奇譚、という情報から、ある程度時代と舞台を予測できる。それでいて長ったらしくない纏まり感。すごい。
■あらすじ感想
大戦を”大戰”と書いている点に「お」と思わされました。作品の世界感やガジェット、その雰囲気に、”大戰”という文字からただならない拘りを予感しました。
主人公は復讐心をうちに宿す元子爵令嬢(子爵をこしゃくと毎回読むアホなのでどうにかなりたい)。現在は郵便逓送員と私立探偵の二足の草鞋を履くアグレッシブな人ですね。
だけど『銃声に色を感じ、銃に心躍る一風変わった一面を持つ』『──この銃声。堪りませんわ。』とあるように復讐心だけではない、銃への嗜好により自身を危険な場所に駆り立てているような。そんなキャラクターの魅力的な奥行きを感じつつ、本文を読み始めました。
あらすじの時点で既に面白いにおいが漂う~~~~。
■本文感想
まず序盤での戦闘描写でビリビリに痺れさせられましたよね。かっつっこいい……。そしてガジェットを扱う主人公の動作、そのガジェット自体の奥行きも深すぎる。(以下長文注意報)
『S&Wモデル2アーミー』。調べたところ、坂本龍馬が護身用に使っていた銃として有名みたいですね。作中時点で50年近い歴史を持ち、生産は既にストップしている。作中で述べられている通り、戦闘では今一つ頼りない造りと威力であるが、南北戦争によりそこそこ流通したため、型落ちで安いかつ護身に適した銃ということで、確かに護身用の郵便保護銃として支給されるのも納得できる。自分はディグれなかったんですけど、実際に郵便保護銃として使用されていたんでしょうかね。知的好奇心がそそられる。
フレーム下部のラッチを引いて、バレルを上へ跳ね上げる。六発全弾装填済みなのを確認して、バレルを元の位置に戻し、撃鉄を引く。
本文冒頭部分より
作者様も銃がお好きか????
あまりにも具体的な描写なので、上記で参考にした記事内の発砲動画と比較してしまった。
比較した結果、さらに本文内の描写がリアルになりました。どうしてくれる。(褒)
なお、主人公の扱う銃はワルサーモデル4。当時のワルサーのハイエンドモデルでしたということで。激アツ
ていうか、描写を見ると他の素材もかなり凝っている。一つ一つ拾い上げたら語る文字数が足りない。これ作者様の執筆カロリーえぐない???この強度の世界観を維持しながらキャラクターを描写し続けるのは、私だったら頭爆発しそうになりますわよ。オーッホッホッホ!!!!
さらに言語を現代に寄せつつも仮名や旧字体を要所で使い、大正の舞台の空気感を損なわせない。この時代を表すにあたり、表現者として最も合理的な文章表現方法を選択していると思うし、そうした部分での妥協を許さない作者様なのかもしれない。文章に血潮が滲んでいる。主人公のキャラクター造形もしっかりしていて、奥行きを感じさせる。
今後、どう父親を陥れた者のしっぽをつかんでいくのか。そして、主人公自身の銃への嗜好がどう物語へ関与していくのか気になりますね!かなり書き出しでの引き込み力が高い作品でした。
大変でしょうけど、ぜひ書き上げていただきたい作品です。
▪️投票のための採点
- 導線の強度:★★★★☆(世界観への引き込み力が一級品。主人公がどう物語を導いていけるかに期待)
- アイデア:★★★★★(デザイン性の高い文章。元華族の主人公。元執事セハス。ガンアクション。アイデアの洪水や)
- キャラパワー:★★★★☆(この造り込みゆえに、そのうち主人公のキャラクター性が物語をけん引してくれるという期待が高いです)
- 好み:★★★★★(表現への執念すら感じる。もはや歴史小説としての興味すら持ってます。今後の展開に期待してます)
計:18点
以上、1-1から1-10までの感想でした!!
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